第6章 三人目 無頼漢リンク※
男はジルの首の下に手を差し入れ、床から抱き上げると俺に向き直り一瞥した。
「でも、僕はちっともそう思わない。 あんたのしてる事はただのガキの癇癪か八つ当たりだ」
「ま、……待て。連れていかないでくれ。ジルは……ジルは」
たった一人生き残っていた俺の妹。
妹の、大きくなったジルの笑顔をもう一度見たかった。
汚れてみっともない顔にも構わず、俺はジルにすがろうとした。
無理な事だと分かってはいた。
だが無かった事にしたかった。
それに構わず忌まわしいものの様に俺を振り払った男は、ジルを抱いたまま戸口に向かい立ち止まった。
「お前は実の妹の彼女を傷付けて犯した。 例え妹でなくとも、いや……俺は生まれてからこれまで、こんなに腹が立ったのは始めてだ。 次に顔を見たら、どんな手を使っても必ずお前を地獄に叩き落とす」
滅法腕っぷしが強いと言われてた俺の全身の毛が逆立った。
強さとは単に力では無い。
こいつは刺し違えてでも俺を引き裂くだろう。
本気の殺気とはそんなものだ。
そしてこの男の目も、ジルと同じに死んだ者のようなそれではない。
男が出て行き、俺は頭を落としがっくりとその場にうなだれた。
「……う、うぅ、うあぁぁぁぁ!!!!!」
自らの吐瀉物にまみれながら、生まれて始めて大声を上げて泣いた。