第6章 三人目 無頼漢リンク※
「………う、うッ、げぇぇぇ………っ!!!!」
元の小屋で意識が正常に戻った俺は盛大に吐いた。
汚らしい嘔吐物の中に混ざって胃液も一緒に上ってくるが治まらない。
女は苦悶の表情を浮かべたまま傍らに倒れていた。
生きて、るのか……?
「はぁッ……はッ」
頭は冷水を浴びせられたみたいに冷え、額から妙な汗がダラダラと流れてくる。
露わになった女の足から一筋、先ほど自分が傷付けた赤い体液が流れた。
「ぐぅッ……」
また吐き気が込み上げてきた。
身体中の血液が逆流してるようだ。
「な………」
なんて事だ。
戸口に微かな音と共に何かがいる気配がし、四つん這いで低い体勢のまま振り返る。
大きく開け放されたそこには最初にジルと一緒に居た青い目の男が余程急いだのか、息を切らしながら立っていた。
「ずっと近くに居たし……視えた、からね」
そんな訳の分からないことを呟いた。
そいつは玄関から真っすぐ進んだところにある俺たちが居る部屋にズカズカと入ってきた。
「僕はあんたの過去なんか興味無いけどね」
「て、てめえ……、ぐッ!」
俺は立ち上がろうとしたが、頭痛と吐き気で無様によろけ、自分で壁に体を打ち付けてしまう始末だった。
男がそんな俺を無視しジルの脇に跪いた。
傷付いて汚れたジルに触れる。
「……なんて……無茶を」
絞り出すような悲痛な様子でリラ、と呟く。
「リラ……ジル、なんだよな?」
「そう。 ついでに言うと彼女は最初からあんたの事は解ってた」
「…………な」
その男は部屋全体を見やりながら一転して冷たい声で淡々と話し始めた。
「この家がね、リラちゃん達が昔家族で隠れ家にしてた所とそっくりだったと」
「な、なぜ言わなかったんだ? 俺…はジルを……」
「残りの家族が殆ど死んだと最初あんたから聞いて、自分だけ助かったってのがショックだったらしい。僕は止めたけど、あんたの事、本当は優しくて家族思いの兄だって、一人でここに残るって言って彼女は聞かなかった」