• テキストサイズ

小さな愛【R18】

第2章 リラの旅じたく




「なにかお礼をしたいんだけど。 キミなんかお願いごとはない?」

「はい、成弥のお嫁さんになりたいです!」
「ぶっ!」


私の即答にキルス様が盛大に吹き出した。
その反応に馬鹿にでもされたようで気を悪くしかけた私に、謝るように片手をあげた。それでも堪えるように口許を抑え赤い顔をしている。


「ふ、……ご、ごめん。 でも、それは少し難しいね。僕は基本的にそこまでは関与出来ないから。でもね、うーん。確かにそうなのかな。キミ、三歳超える今まで、発情期って無いでしょ?」

「はい?」

「それね、成弥のせい。リラが彼に恋してるからだね。 そもそも恋してない相手と結婚したいってなんないでしょ」


はい? こい?


「……でもお医者さんからは、私が小さい頃栄養失調だったから、ホルモンだかの形成が不十分でこうなったって、聞いたことがあります」

「うん、それを成弥が自分のせいでそうなったと気に病んで、毎日健気にも自分の食費より、高い食事をキミに与えてる訳だけど、実は違うんだなあ」


キルス様がまるで私たちの事を何でも知っているかの様に話を続ける。神さまでもある彼にそう言われると、自身が思い至らなかった自分のことまでそうなのだという説得力が増す。
確かに私は成弥を好きだけど、これは恋なのか。
その響きにドキドキしてしまう。


「結婚ね……生まれ変わったらって話なら、何とかなるかも。それならどう?」

「それって、私が死んだらですか?」

「うん。まあ、当然猫のときの記憶も無いわけだけど」


私は何も言えずに下を向いた。恋云々の前に、私には成弥の近くに居続けたい理由があった。
それじゃあ成弥を守れない。 生まれ変わったらなんて遅すぎるもの。


「彼が大事なんだね?」


私の心情を即座に察するキルス様にこくこく、頷いて応える。


「じゃあこれはどうかな? 一度だけチャンスをあげる。あることが出来たら、キミを人間にしてあげるよ。 成弥のお嫁さんになれるかどうかは、それからのキミの頑張り次第」

「ほ、本当ですか?」

「うん。といっても、どうかな。 もう百年位出来た子は居ないね」


キルス様が神妙な表情をしながら続けた。
なんでも、人間になるには、とても強いパワーが要るらしい。 それを得るには、たくさんの強い心と生命力の量が必要になると。


/ 139ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp