第6章 三人目 無頼漢リンク※
男の方が考え込んだ。
「うちはもうじき子供も産まれるし、家の広さからいっても多分一匹が限度じゃないかな」
「でも、引き離すのは可哀想よ。兄弟でしょう?この子たち」
俺たちを前にそんな会話をしている。
さり気なく家の様子に目を向けて観察してみた。
手入れのされた芝生、家自体は小さいが大きな窓と明るい様子のリビングが見て取れる。
「お兄ちゃん、行こうよ」
モリーも彼らの会話を聞いていたのだろう。
俺の腰を後ろからぐい、と口で引っ張った。
「僕、お兄ちゃんと離れるの嫌だもん。 縄張りは他の所を探そう?」
俺はそこを動かず彼らの話に耳を傾け続ける。
「じゃ、いつも傷付いてるこの子はどうかしら」
女が言って、俺をひょいと抱き上げた。
その瞬間、俺は頭を振って加減しつつも女の手の皮に噛み付いた。
「きゃあ!!」
「あっ!こいつ、何するんだ」
男は慌てた様子で女から俺を引き剥がし地面に叩き付けた。
むくりと起き上がった俺は彼らに背を向けた。
尻尾を左右に振りながらその場所を離れようとする。
「お兄ちゃん!」
俺を追いかけようとするモリーが後ろから俺の代わりに男に抱えあげられた。
俺はちらとそれを目の端に認めて歩を進める。
「俺は一人の方がいい。もうそろそろ自立して伴侶も探したいんだ」
あの猫はきっとボスなんだよ。 気性が荒いから飼い猫には向いてない。
そう。それじゃあこの子に……
更に足を早めやがて走り始めた俺の背中から、夫婦のそんな会話が聞こえてきた。
お兄ちゃん!お兄ちゃん!と何度も呼ぶモリーの声が遠ざかっていく。
せめてモリーは生き残れるといい。
あの夫婦ならきっと可愛がってくれる。
俺が助けられなかった妹たちの分まで。