第5章 愛玩する僕の心を恐ろしく思った【薄桜鬼】
其の後、新選組を上げてちゃんを見送った。
近藤さんも土方さんも……
左之さんも平助も、一君も……
誰一人として僕を責める事はしなかった。
全員が只管にちゃんが安らかである事を祈っていたと思う。
僕はきっと此れからも多くの《もの》を奪いながら生きて行くだろう。
だけど君の事は絶対に忘れない。
僕に抱かれながら見せてくれた含羞む様も……
僕を受け入れながら聞かせてくれた可憐しい声も……
哀しいけれど、凛とした君の生き様も……
ねえ……ちゃん。
もう少し時間は掛かるかもしれないけれど、僕も必ずそっちへ逝くから……
其の時にはまた僕に『好き』って言ってくれるかな?
君の精一杯の『好き』が聞けるなら、僕はもう自分が恐いとは思わない。
ちゃんは何度も『私を救ってくれた』って言っていたけど、救われたのはきっと僕の方だ。
ありがとう。
好きだよ、ちゃん。
左之さんが言った通り、僕とちゃんはやっぱり似てるね。
僕の精一杯も『好き』の一言で全てだ。
良く晴れた昼下がり。
ちゃんの墓前で顔を綻ばせる僕を、近藤さんも土方さんも……
左之さんも平助も、一君も……
柔らかい眼差しで見つめてくれていた。
了