第3章 傀儡-KAIRAI-【イケメン戦国】
結局光秀はの腹積もりを読み取れたのであろうか。
其れについてはお互いが言及せぬまま時は過ぎ………
織田の日ノ本統一完遂まで後一歩と成った時期に其の出来事は唐突に訪れる。
未だ春も浅い冷えた夜更け、秀吉が天主に飛び込んで来た。
「信長様、謀反で御座います!」
微睡んでいただけの俺は直ぐ様覚醒し秀吉に問う。
「此の期に及んで謀反とは。
何れの国よ?」
「其れが……
奥方様の御実家の様で。」
「……何だと?」
「安土城の明け渡しを要求し、
一万の兵が城下を取り囲んでおります。」
光秀が危惧していたのは《此れ》か。
此所迄を俺に遣らせておいて、天下人としての地位を横から掠め取る心算であったのだな。
狡賢くて薄汚い遣り様であるが、此の乱世ではそう珍しくもない方法だ。
然し……気なるのは秀吉の落ち着き様。
此奴は何か勘付いておるのか?
であるならば俺が無様に狼狽える訳にもいかぬ。
「相分かった。
此の織田信長が直接に対峙してやるとしよう。
秀吉、案内しろ。」
「御意。」
秀吉を伴い城門を出れば、其処に居たのは完全武装したの兄。
碌に顔も覚えてはおらなんだが、有難い事に名乗ってくれた。
「我が義弟、織田信長殿。
私は無益な殺生は好みませぬ。
自身と安土の兵が可愛ければ
早々に《全て》を我が国にお渡し戴きたい。」
さて、如何したものか。
無論『はい、そうですか』と言う訳にも行くまい。
俺が無言で思考を巡らせていると
「さ……奥方様、此方へ。」
背後から秀吉の穏やかな声が響いた。