第9章 豊臣の若紫【イケメン戦国】
其れからは政務の間を縫って、婚儀の準備を進める日々。
に告げた通り、何もかもを最上級の品で揃える。
其の品々が先ずは安土城の一室に集められ、俺は一つ一つを吟味しては検討を繰り返していた。
「何やら忙しそうだな、秀吉。」
そんな折り、城内の廊下で擦れ違った光秀に声を掛けられる。
「ああ……一寸な。」
適当にあしらう心算でいたが、其所は其れ流石の光秀だ。
いとも簡単に核心を突いて来やがった。
「が輿入れするそうではないか。
お前もやっと肩の荷が下りるって所か?」
「肩の荷だなんて思っちゃいない!」
其の言い種が癪に障りつい声を荒げて仕舞うと、光秀はしてやったりと言わん許りに口角を上げた。
「肩の荷で無ければ……何だ?
は秀吉の何なのだ?」
俺に何を言わせたいのか……
此の儘光秀に付き合わされては腹の中全てを探られそうで、俺は一つ息を吐いてから穏やかに答える。
「お前も知っているだろう……光秀。
は俺が子供の頃から面倒を見てきた大事な《妹》だ。
輿入れすると決まれば、
其の準備を抜かり無く進めるのも《兄貴》の務めじゃないか。
俺はを日ノ本一の花嫁御寮として送り出す。
お前もの晴れ姿を楽しみにしててくれ。」
「……………そうか。」
思いの外熱く語った俺は、更に揶揄われるのを覚悟したが光秀は其れ以上は何も言わず
「では、精々頑張る事だな。」
と、珍しく真っ当な言葉を残して去って行った。
「此れは此れは……
中々に拗らせている様だな。
さて、常日頃世話になってる秀吉の為だ。
………一肌脱いで遣るとしようか。」