第7章 下拵え【薄桜鬼】
「そうですね。
此の子には沢山の弟妹が出来るのですから
最初は男の子でも女の子でも構いませんね。」
俺の頭の中を読み取ったのかと思う様な言葉を紡ぐに息を飲み目を見開く。
そんな俺に気付いて振り向いたは
「……千景様?」
不思議そうに小さく小首を傾げた。
全く……我が妻には適わんな。
其のままの唇を啄み、耳元で囁いてやる。
「余り愛らしい事を言うな。
未だ此の子が産まれてもいないのに
二人目をの中へ仕込みたく為るではないか。」
「………其れは無理ですよ。」
くすくすと笑うを更に抱き寄せ横髪に口付けた。
ああ……こういった穏やかな時間を重ねて俺達は夫婦となっていくのだな。
此れはが俺へと施す、生涯の夫と成る可き《下拵え》
俺はお前の身体から拘束したが、お前は俺の心をいとも容易く拘束する。
だが、其の拘束の何と心地好い事よ。
今はお前の夫と為れた己が誇らしい。
そして早く、の子に『父上』と呼ばれたいものだ。
そんな事を考えながら脂下がる俺を見つめるは再び小首を傾げていた。
こうして俺達《夫婦》の夜は静かに、そして温かい空気を纏って更けていく。
了