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keep as a pet【R-18 SS集】

第1章 溺れる復讐【イケメン戦国】


私の額にそっと唇を寄せる顕如さん。

その優しい熱に涙が滲んだ。


「逃げて……
 逃げて下さい、顕如さん。」

「此処にお前一人を残して逃げるなど
 出来る筈も無い。」

「でもっ……」

「俺と共に居た門下の皆には暇を出した。
 もう既に散り散りに逃げておる。
 今、此処に居るのは俺とお前……
 二人だけだ。」

「ごめ……
 ごめんな…さっ……」

「何を謝る事がある。
 が俺の凍った心を溶かしてくれたのだ。
 頼む……泣いてくれるな。」

困った様に微笑んだ顕如さんと私の吐息が重なる。

数度お互いの唇を食んでから、顕如さんは私を手離し法衣を身に着け………

「堪忍な………。」

最後にもう一度、穏やかに呟くと静かに座敷牢を出て行った。



その後、顕如さんがどうなったのか私は知らない。

雪崩れ込んで来た織田兵に救われた私は、そのまま信長様の元へ帰されたから。

信長様はたった一言「出来した」と私を褒めてくれただけで、この策略の結末までは話してくれなかった。



今の私は、安土城で信長様に愛されながら毎日を穏やかに過ごしている。

はち切れそうに膨らんだお腹を抱えて。

信長様は何も言わずに、唯……

この子が産まれるのを楽しみにしてくれている。

信長様と彼が目指した世はもう目の前だ。

私は天主の張り出しに立ち、両手で大きなお腹を撫でながら囁いた。


「もう直ぐですよ……
 ……楽しみですね。」






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