第90章 繋がる思い3
貴方side
☆☆
『大尾中学、シートの変更をお知らせ致します。出光君に代わりまして、ピッチャー眉村さん』
……やっぱ道塁に変えてきたか
『2番ショート、相楽さん』
審判「プレイ!」
道塁「っ」
パアアン!
審判「ファール!」
パアアン!
審判「ストライーク!」
太鳳「…」
……太鳳のやつ、イマイチ勝つ気持ちがないんだよな
強い奴には勝てない、気楽に行きたいタイプだから
日常ではいつも話す方だけど
けど野球馬鹿の私からしたら、その野球への情熱だけは彼女とは初めて会った時から合わない
道塁「っ!」
カンッ
太鳳(っ!ショ、ショートゴロー…)
真正面に飛ばして太鳳は全力で走る
パアアン!
審判「アウト!スリーアウトチェンジ!」
太鳳「……っ」
アニータ「……先輩」
太鳳「…勘違いしないでよ。別に、今まで手を抜いてたじゃないんだからね。
いやさ、なんか、怪我するだけで良い事なんて何もないんだから。
ただ、皆と同じくらい、私もユニフォームを汚してみたかっただけ」
アニータ「!」
☆☆
ベンチ内
太鳳「…」
貴「お疲れ様、太鳳」
太鳳「!…怜花」
貴「…今まで見た中で、一番イキイキしてたよ」
太鳳「……っ」
ドンっ
貴「!?」
太鳳は何故か力強く抱きついてきた
貴「何…」
太鳳「別に、ただギュッとしたいだけ」
貴「弥生にしろよ」←
弥生「えぇー?じゃあ、私も抱きつくわ」
貴「なんで?!」
太鳳「…くるしっ」
近くにいた弥生も抱きついてきて、とりあえず苦しい
そんな中同じ苦しがってる太鳳だが、顔を俯かせながらほんの少し震えていた
先程セーフに出来なかった事が悔しいんだろ
今まで気楽に程々に野球をしていた彼女
全てが変わったわけじゃない
けど
今日の試合は、太鳳にとっても情熱があるきっかけになったみたいだ