第7章 質疑応答
「君が裸で巨人から出てきた、という話は本当か?」
「間違いありません。憶測も含みますが、報告したほうがよろしいでしょうか?」
「頼む」
気分が落ち着かないので、カップの縁を指で何度もなぞる。
「同じ104期訓令兵に、レックス・ロウンという者がおります。レックスには何度か薬物を使用されて襲われた事があります」
え? なんで、私はそんな事を話している?
「レックスは、おそらくエレンと同じ巨人になれる力があります。とても足の速い3メートル級の巨人です。その巨人から立体機動で逃げようとしましたが、立体機動に追い越す速度の巨人でしたので、捕まり踊り食いのように無傷で体内に放り込まれました」
違う、違う! こんなに細かくしゃべるつもりなんて無かった! コーヒーカップを置き、爪を立てて左腕をかく。白い肌が赤くなり、血が滲む。痛みで正気に戻そうとしたが、リヴァイ兵士長が私の右腕を掴み自傷行為が止められた。もっとキツく握ってくれればいいのに、その手はどこか優しい。
呼吸がし辛い。解毒薬は飲んだはずなのに、効いていない? それとも、解毒薬のおかげで正気が多少あるのだろうか?
「体内に放り込まれて……どうなった?」
「っ!」
「話した方が楽になる」
「あな……たがっ! そ、れを、言うっ!?」
「あいにく手段を選んでいられるほど、余裕が無いのでね」
「体内で凌辱されました。触手に拘束され、動けず、粘液には媚薬の効果があると聞かされました。巨人の言葉が片言で、うまく聞き取れはしませんでしたが、あれは……あれは……レックスの声で間違いありません! 私は、レックスに! あいつに何度も! 何度も!! 次会ったら私が殺します。エレンの巨人体で頭が吹き飛ばされて、私は外に出られました。なので、生きているかは分かりませんが、殺します!! 私が殺す!! あいつだけは、絶対に!!」
エルヴィン団長にキスをされ、口の中にコーヒーの苦みが広がる。違う。流し込まれている。顔を上に持ち上げられ、鼻をつままれ、呼吸の為にコーヒーを飲み込んだ。