第4章 ★初陣:思いの翼★
立体機動装置はまだ生きていた。刃を壁から抜き力の限り踏みしめて、トリガーを引いた。光に向かって、真っすぐに、空へ。いつか聞いた、兄弟子のように、暗闇から抜け出す。空気が冷たい。そりゃ、そうだ。全裸だもの。でも、気持ちいい。
風が、雲が、空気が美味しい。
「アリア!? 何、してるの……?」
「ミカサ! ちょっと空き家で服もらってくるね!」
きっと、今までで一番の笑顔で、そう答えた。
私は何人も殺してきた。それは、いつか罰せられる。罪があるなら罰が与えられるのは当然。そこへさらに窃盗だ。ついでにシャワーも浴びられればいいのに、流石にこれ以上罪を増やしたくは無いので我慢する。
よそ見していたら、ちょうど家の窓に頭から突っ込んでいた。痛い。でも、それが楽しくて、バカみたいだなって思った。
「ごめんなさい!」
パンパンと手を合わせ、誰もいない家の中で声をかける。そういえば、他の人の家に入るときに、なんか声をかけないといけない気がした。礼儀作法はトラウテに教えてもらったはずなのに、全く身についていない。後日謝ろう。
そういえば、私の髪とトラウテの髪ってなんか似ている気がするのよね。色とか質とか。クリスタやユミルとお揃いに出来るように髪を伸ばしてみようかな。
あ、スカートとかワンピースしかない。そりゃそうだよね……。そういえば、何故か私服のズボンって履いたこと無いな。これも、女っぽさを磨かせる為? まさかケニーの趣味では無いよね? 多分。
後日洗って返しますので、お借りします。ワンピースを着て、頭にハチマキを巻く。
「さあ、行こう」
まずは好き勝手してくれたあの巨人を倒そう。窓から重力のままに飛び降りると、そこへアルミンが来た。
「ミカサ! アリア!」
ミカサは膝をついたまま動かない。アルミンは立体機動でミカサへと降下し、そのままの勢いで屋根の上に転がり上がった。