第1章 104期訓練兵団
私には、役目がある。たった一つだけ。その為だけに生きている。その為だけに生かされている。暗殺する手段を与えられ、戦う覚悟を与えられ、自由など欲したことも無い。だから、今度の役目もただこなすだけ。それだけでいい。
壁が破壊されても、どうでも良かった。役目を果たすだけ。だから、兵士になれと言われれば兵士になる。
104期訓練兵。次の目的地。
「オイ! 貴様ぁっ!!」
教官の声が響く。威圧せねばならないのだろう。
「貴様は何者だ!」
「シガンシナ区出身! アルミン・アルレルトです!」
一応、同期となる人物の名前と顔は覚えておく。そのうち、殺すことになるかもしれない。名前と顔は一致させておけば、手間が省ける。そんな風に、漠然と考えていた。
その日は突然だった。
「アリア! ちょ、ちょっと待って」
立体機動の適性試験を終え、本格的な訓練が始まった日。その男は、私に声をかけてきた。ライナー・ブラウンとベルトルト・フーバーの同郷で同室の男。整った顔はしているが、特に特出した才能が無い男。名前は確か……。
「レックス・ロウンさんでしたっけ? どうかなさいましたか?」
懐に隠してあるナイフを握りつつ、笑顔で応対する。
「好きです。付き合ってください」
「は……何……?」
「一目ぼれしたんです」
ちょっと黙っててくれませんか。殺意を表に出すな、と言われているのに出てしまいそう。むしろ今すぐ頸動脈を切ってやりたい。ダメ? ダメ? 無闇に殺すな、と言われてはいるけど、反吐が出そう。いや、既に出てる。