第3章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 前編
ひめじま君に次の任務が与えられるまで、ここに滞在することが耀哉君からの決定事項だった。
どうやらそれに反対する気はないようで、ひめじま君本人も静養と修業をここですると決めたようだった。
そして私は先生の言い付け通りに、毎食、肉か魚を食事に入れるよう心がけた。
先生も、肉や魚を手に屋敷に来ては、ひめじま君を診てくれる。
すると、数日で判る程の筋肉の付き方が変わって行った……
あと変わったのは……
ひめじま君の呼び名だった。
“ひめじま”と聞いて私が勝手に“姫島”だと勘違いしていて……それに気づいていた、ひめじま君が
「行冥とお呼び下さい」
と言ったからだ。
“悲鳴嶼”なんて……確かにお世辞でも綺麗な名前とは言えないもんね……
どうしてかな……
彼の背負っている物全てが、悲しく感じる。
だけど、そんな想いは私の勝手。
だから、顔には出さない。まぁ、彼には見えてないんだけどね……
せめて私は元気に明るく、彼と接する。
そして今よりもっと元気になって、また鬼狩りに行けるようにしてあげたい!
そう。それだけが、私の願いだった……
その時、までは……