第3章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 前編
初めて彼に会ったのは、まだ彼が
柱になる前で、今よりもずっと身体が細かった頃だ……
私は一度嫁に出たものの里帰りさせられた、所謂『出戻り』。
実家は、産屋敷家の遠縁にあたり、これまた所謂『良家』と言うヤツだ。
まぁ……そんな家の娘が、出戻ってきてしまったら……ねぇ。居場所なんて、もちろんない。
で、今は近しい親戚がいるここに住んでいる。
所謂『藤の花の家紋がある家』だ。
ここにいると、鬼殺隊の隊士が宿代わりに使ったり、休憩したり、
そして、時折 怪我をした隊士もやってきたりする……
簡単な怪我の手当ては、ここに来てから学んだ。
薬等も全て用意されている。
そして私達は、ただここに訪れた隊士をもてなすだけだ。
だからかな、よく感謝される。
ありがとう、と言う言葉は、心地良い。
私が此処に居て良いのだ、と思えるから……