第8章 心の隙間
「あの日、偶然家康と一緒になって、あの場所で話そうって事になって行ったらやっぱり君がいて、..............いつもと違って悩んでるみたいな君に家康が知り合いだから声を掛けようと言って声を掛けたから、これはチャンスだと思って君に近づいたんだ」
義元さんの目が、映画の中の高校教師役の時と同じ目になって、私の手を引き寄せて、包むように自身の手を重ねた。
「セナ、俺は、君の事が好きだよ」
「っ......................」
今私........告白された?
いやいや、これは...............役作りの一環?
「映画の中の教師としてではなく、俺個人として君が好きだよ」
私の心の中を読むように、義元さんは言った。
さっき私は、義元さんと付き合う人は幸せだなぁと思った。
本当に彼は優しくて、今日は楽しくて........
でも.........
「あの......私..........す」
「まだ何も言わないで。今日はただ、俺の気持ちを知って欲しかっただけだから」
「あの、でも私、好きなひ」
「しー、だめ。それ以上は、ね?」
義元さんは、喋ろうとする私の唇に人差し指を当てて私の口を塞いだ。
「ここの料理美味しいんだ。食べよ」
まるで何も無かったように、義元さんは箸を手に持ち料理を口に運んだ。
「うん、美味しい。ほら、セナこう言うの好きでしょ?」
「......はい。いただきます」
私は........ずるい。
いくら義元さんに止められたからと言っても、社長の事が好きだと、契約上ではあっても、付き合っている人がいるんだとちゃんと言うべきなのに....
「...........ほんとだ。美味しい」
義元さんの優しさに甘えたくなってる。
「良かった。まだ色々出てくるからたくさん食べて」
人生初めてのデートは、私の思い描いていた理想のデートそのもので、終始優しさに包まれていて、とても楽しくて..............
だから、全然気づかなかった。
その楽しい瞬間全てを、写真に撮られてたと言うことを..........
そしてこの写真がきっかけで、自分がどんどん追い詰められて行くなんて、その時の私は思ってもいなかった。