第5章 都会の空気
「や、まって、」
「待たない」
「やっ、んっ.........」
彼が舌を這わせちゅうっと吸い上げるたび、感じた事のないぞわぞわとした感覚が込み上がってくる。
出そうになる声が漏れないように必死で手の甲を口に押し当てていると、彼の手が背中に回り、またベッドへと沈められた。
確か、目が充血して、空気清浄機を使ってない事を怒られてたはずなのに、何がどうして何でこうなった!?
焦る私に構わず彼は口と手で遠慮なく胸の愛撫を続ける。
「んんっ、っ..............」
胸の先がじんじんとしてきて痛い位に立ち上がっているのが自分でも分かった。
「ふっ、ん、やめっ.....あっ」
我慢の限界を超えて、ついに大きな声が漏れた。
聞いた事がない自分の恥ずかしい声に、どうしようもなく顔が熱くなって動揺した。
「..................っう」
また感情がごちゃごちゃになって、涙と嗚咽が漏れた。
「セナ、泣かなくていい。ただ感じたままを受け入れろ」
「うぅっ........」
泣き出した私の頭を撫でながら、頬に流れる涙を唇で受け止めてくれる彼に優しさを覚えたのはほんの一瞬で、次の瞬間、頭を撫でていないもう片方の手が下へと伸び、スカートの中へと入って来た。
「し、社長?...っく」
驚いて目を見開いた私と、情欲に駆られた彼の目が合った時、ブルブルブルっと、彼のお尻の方からスマホの震える音が聞こえた。
彼はチッと軽く舌打ちすると、スマホをズボンの後ろのポケットから取り出して画面を見た。
「ふっ、命拾いしたな。時間切れだ」
「へっ?」
「秀吉からの呼び出しだ。次までには、その騒がしく忙しい頭の中を整理しておけ」
彼は乱れた(彼に乱された)私の衣服を簡単に整えると、ちゅっと、とどめのキスを落として部屋を去って行った。
「..........................ど、どうしよう、ドキドキしすぎて死んじゃうかも.....」
果して、私は彼と最後までする事が出来るんだろうか。
嵐のような出来事が去った後も触れられた所全てが熱くて、胸が苦しくて........
充血した目を休めなければいけないと分かっていたけど、その夜もまた、中々眠る事ができなかった。