第38章 夢が見せる奇跡 〜年末年始特別編〜
「メリークリスマスっ!」
パーン!
自宅の部屋の中、私は一人エアークラッカーを鳴らした。
「そんな音を鳴らして腹に影響はないのか?」
ローストポークを切りながら信長はそう言って笑う。
「だって、外に出られないから、気分だけでも盛り上げたいし…」
色とりどりのイルミネーションに彩られた街には雪が降っていて、素敵にホワイトクリスマスを演出している。
「今日明日にでも産まれそうな妊婦の言葉とは思えんな」
「ほら」っと、切り分けたローストポークを信長はお皿に乗せて私の前に置いてくれた。
「ありがとう。でも二人で過ごすクリスマスはこれで最後だよ?」
初めて一緒に過ごしたクリスマスから今日まで、全てのクリスマスを鮮明に覚えてる。全てが大切な思い出……
「子どもが大きくなればまた二人だ。だがその時まではお預けだな」
「うん、幸せなお預けだね、あ、乾杯!」
スパークリングウォーターをグラスに注いで私たちはそのグラスをカチンと合わせた。
「信長はお酒飲んでもいいのに、私は元々あまり飲まないから気にしなくていいよ?」
「何かあればすぐに貴様を病院に連れて行かねばならん、そんな気分にはなれん」
グラスのスパークリングウォーターを一気に飲み干すと、また並々とグラスへと注いだ。
(信長も落ち着かないんだ…)
クリスマスが予定日とされていた私のお腹はパンパンに膨らんでいて時折ぐにゃりと赤ちゃんが体内で動いているのがよく分かる。
「あいたた…」
「どうしたっ!」
「あ、ううん、赤ちゃんが思いっきり伸びしてるみたいで、っっ…」
元気な証拠だけど、元気すぎでたまに皮が突っ張って少し痛い。
「何かあればすぐに言え、車はいつでも出せる」
「うん、分かってるありがとう」
でも、まだこんなに元気に動くって事は、降りて来てないって今朝の検診でお医者さんが言っていたから、まだ今夜は陣痛は来そうにない。(おしるしもないし…)
初産は早まりがちだと聞いていただけに、中々予定日になっても兆しのない事に、信長もめずらしく落ち着かないみたいで、二人では食べきれないほどのクリスマスディナーの量がそれを教えてくれている。