第37章 最終章〜あなたが与えてくれたもの〜
結婚後、私の大学の卒業を待って、信長と私は海外へと生活拠点を移した。
そして月日は流れて行き…………
「セナ 、そろそろ会場に着く」
「あ、うん……」
「?なんだ、緊張してるのか?」
「うっ、そんなの当たり前だよーーーっ!だって初めての映画祭だよ」
「何も貴様が賞をもらうわけじゃないだろ?俺たちはただのゲストだ」
「そうだけど…、まずこのリムジンも初めてで緊張するし」
タクシーで移動かと思ってたら目の前にリムジンが現れて、乗り込んだはいいけどどこに座るんだ?って焦ったし。
「あっ、髪は変じゃない?ドレスは?って、外出たらもう目の前にレッドカーペットが敷かれてて会場みたいなもんだから確認できないよね。あーどうしよう。もっと緊張してきたぁー」
ドキドキと高鳴る胸に手を当てて、息を思いっきり吸い込んで吐き出した。
「あ、このリムジン降りた途端英語でインタビューとかされないか…んっ!」
何かを喋って心を落ち着けようとしていた口をキスで塞がれた。
「少し落ち着け。貴様は誰よりも綺麗だ。それに誰と一緒だと思ってる?」
「…っ、信長です」
「分かってるのなら笑え。貴様はそれだけで周りを魅了する」
「それは…言い過ぎだと思う」
そうそうたる海外セレブや俳優陣が集まる映画の祭典なのに。
「言い足りんくらいだ」
不敵に笑いながら信長は私の顎を持ち上げて再びキスを落とす。
「んっ……」
さっきの掠めるだけのキスとは違い、深く呼吸を奪われるキス。
私たちが今から向かう先はあの有名な映画祭。なぜそんなところに出向くのかと言うと、私の自叙伝が映画化され、その映画が今回の映画祭で作品賞にノミネートされたからだ。
「っ、信長…ここ車の中…」
ほとんど守られてないけど、結婚後も外での濃厚なキスは禁止している。(海外だから軽いのは許可としているけど)
「この車は何をしても誰にも見えん。そのための車だ」
「ちょっ、まっ、…ぁ、」
信長が見出してくれた私は申し訳ない事に結婚後もあまり大ブレイクをすることはなく、こっちに移住してからも、日本とこっちを行き来しながらモデルと女優の仕事を細々と続けていた。