第37章 最終章〜あなたが与えてくれたもの〜
「はぁ〜っ!?今なんて言った!?」
早朝の社長室に、ケイティの声がこだました。
「大きな声を出すな。耳が痛い」
信長は迷惑そうな顔を前面に出してケイティを睨んだ。
「だっ、だって、…お願い、私の聞き違いだと言ってちょうだい」
ケイティはふらっと気を失いそうになり、その後ろで呆然としている秀吉さんに寄りかかった。
「まだ耳が遠くなる年でもないだろう?何度も言わせるな、結婚したと言っている」
信長は淡々と言い捨てパソコンの画面に視線を移す。
「けっ、結婚って、そこにいるセナとっ!?」
「他に誰がいる?」
「っ、…セナっ、本当なの?」
(お願い、嘘と言ってちょうだい)とケイティの顔には書いてあるけど…
「…………うん」
心配をかけた事に申し訳ない気持ちはあれど、それを上回る幸せな気持ちには打ち勝てず、私はケイティから目を逸らして自分の薬指の指輪達に視線を落とした。
「セナ、あんたそれ…」
私の視線を追ったケイティは私の左手を掴んで指輪を目の前でまじまじと見つめる。
「おい、勝手に触れるな」
そして信長はそれをすかさず阻止し、ケイティから私の手を奪って握った。
「何これ、結婚指輪だけじゃなくて、エンゲージリングまでして…婚約なんてすっ飛ばして結婚したのに必要ないじゃない」
さすが、中身が乙女なケイティは、女子力の高いツッコミをしてきた。
「失礼なことを言うな、婚約期間はちゃんとあった」
信長はしれっとそう答えて私の薬指に軽く口づける。
「はぁっ?いつあったって言うのよ!まさかハワイにいる間に婚約してたって言うんじゃないでしょうね!」
「そのまさかだ」
「なっ、なっ……!」
またもや気絶しそうなケイティを秀吉さんがガシッと支えて、ケイティは一瞬キュンとした顔を秀吉さんに向けた。
ケイティが怒るのも無理はない。
私だってまだ信じられないのだから……