第3章 専属契約
「でも、この間の彼女さんは?」
キスしてる所を見てしまったあのお天気キャスターの女の人。
「あの女とは、ただ男女の利害が一致しただけの関係だ。俺は誰とも付き合った事はない」
「付き合った事はないって.........」
私も、誰とも付き合った事はないけど.......
同じ言葉なのに、全く同じ意味をなさない彼の言葉に、心が警笛を鳴らす。
「貴様が初めて付き合う女になる。貴様の初めてを全てもらうかわりに、俺の初めても貴様にやる」
危険だと、堕ちてはいけないと、泣かされるだけだともう一人の自分が叫ぶ。
「セナ」
目の前の悪魔は綺麗な顔に不敵な笑みを作って私に手を差し出す。
この手を取った先にあるのは幸せではない事も分かってる。
でも............
「契約......します」
この手を取らなかったら私は一生後悔する。
「交渉成立だ」
ニヤリと口角を上げ、彼はわたしの手を握って引き寄せた。
「あっ、」
頬に彼の堅い胸板の感触。そして彼の匂いを感じるのは二度目だ。
あと何回、こうやって彼を感じることができるのか分からないけど、もう引き返せない。
専属契約なんて、きっと口から出まかせに違いない。いくら私が何も知らない子供でも、それくらい分かる。彼はただ、何も知らない私が珍しくて興味が湧いただけ。
きっと、直ぐに飽きられて捨てられるに決まってる。
胸に渦巻く負の感情で、また涙が溢れた。
「怖がらなくていい、急に抱いたりはしない」
綺麗な悪魔は、残酷なまでに優しく私に微笑み囁いた。
「まずはキスからだ」
「んっ............」
舌先でなぞるように重なった唇はとても甘くて優しかった。
人生二度目のキスは想像以上に官能的で蕩けそうだったけど、同時に切なくて、胸がキシキシと軋んだ。