第29章 突然の・・・
「えっ、舞台挨拶っ!?」
雑誌の撮影の帰り道、車を運転するケイティから舞台挨拶の仕事が入ったと聞かされた。
「そうよ、舞台挨拶。前にもやった事あるでしょ」
「あるけど…、あれは義元さん主演の全国ロードショーの映画だったからで、今回のはそんなに規模も大きくないのに、舞台挨拶なんてあるの?」
今回出演させてもらったのは、いわゆるミニシアター系の映画で、どこで公開され、どれほどの期間上映されるかは、制作会社側の頑張りと、口コミや見た人たちの評価などで決まるシビアなもの。だから、舞台挨拶なんてないと思ってたけど…
「何言ってんの、小さな映画で宣伝にお金が掛けられないからこそ、地道に映画館に出向いて宣伝するのよ。それに、あの映画結構評判良いのよ。なんたって監督がイケメンってのが良いわよね〜」
そう、この映画の話を持ってきてくれたのはケイティ自身。「とにかく良いのよ。出てみる価値ありよ!」と、とても熱心に勧められ、私もまた映画に出られるのはとても嬉しくて二つ返事でオッケーをしたけど、なぜあんなに乗り気だったのかは、監督に会ってみて納得。
ケイティ好みのとてもイケメンだった。(ストーリーももちろん良いけどね)
「主演の男の子もいいけど、監督のあの色気は30代半ばの男にしか出せない色気よね〜。信長ちゃんにもまだないものだわぁ〜」
言葉の端々にハートマークが散りばめられた様な声で、ケイティはうっとりとつぶやいた。
「え〜、信長の方が色気があって素敵だよ?」
何を張り合っているのか、でも信長にはない色気と聞いては黙っていられない。
「あら、なかなか言う様になったじゃない。まぁ、気性の粗い信長ちゃんを飼い慣らしてくれてるあんたには感謝してるし?それ位の惚気は許してあげるけど、じゃあ舞台挨拶、あんたは参加オッケーで返事しておくわよ」
「あ、うん。お願いします」
信長を飼い慣らすって、絶対に無理でしょ?
どちらかと言えば私がすっかり飼い慣らされて手の内で踊らされてると思うけど…
それにしてもイベントは緊張する。
雑誌の撮影や映画の撮影と違って撮り直しがきかないし、自分の言葉に責任を持たなければいけないから、一言一句、本当に緊張してしまう。
あの俺様な信長はどうやってこのイベント事を乗り切ってきたのかなぁ。今日あったら聞いてみよう〜っと。