第27章 全てはあなたを喜ばせるため 〜信長様誕生日sp〜
信長と久しぶりのデートの約束をした私は、少し早めに家を出て、都内某所にあるハイブランド店に初めて一人で足を踏み入れた。
ここは信長御用達のお店で、私のお気に入りのライトブルーのワンピースを買ってくれたお店だ。
「いらっしゃいませ。.......あら?今日はお一人ですか?」
上下黒のスーツに身を包み、キリッと髪を結い上げた上品な店員さんが、私に気付いて声を掛けてくれる。
「あっ、はい。あの...........、贈り物を探しに」
いつもは、信長の仕上がったスーツの受け取りに付き合って一緒に来るから(もちろんお洋服や靴、バッグも買ってもらっている)、一人はとても心細い。
「信長様のお誕生日ですね?」
「はい」
「何を贈られる予定ですか?」
「あの........ネクタイを.......」
いつも、両手にいっぱい買ってもらっておきながらネクタイとは情けないけど、このブランドで私が買えるのはネクタイ位しかない。あとはハンカチ?あっ、靴下も?
「かしこまりました。ではこちらへ」
「はいっ、お願いします」
店頭には出さない、お得意様のみの部屋へと案内され、私は信長の誕生日のプレゼントを選んだ。
「信長様、きっと喜びますね」
「はい。喜んでもらえると嬉しいです。色々とアドバイスをありがとうございました」
これでもかと言うほどに、紙や箱、リボンを使いラッピングされたプレゼントを店員さんから受け取り、私はお店を出た。
お店の扉の前で、今買ったばかりのプレゼントを見上げて見た。
男の人への誕生日プレゼント、しかも彼氏への誕生日プレゼントなんて初めて買ったから(パパ除く)、このネクタイに行き着くまでに何日も悩み、誕生日が明後日になるまで中々決められなかった。
「どうか、喜んでくれますように」
袋を抱きしめて、ありったけの願いを込めた。
カシャ!
その時、聞き慣れたシャッター音が耳に届いた。
「ん?」
顔を上げると、やはり週刊誌の記者!
「やべっ!」
私と視線が合うと、彼は逃げ出した。
「あっ、待って!」
多分、お店の中にいる所を撮られた!
いつもなら何を撮られても気にしないけど、今日は見逃せない!
早い記事だと明日には載せられてしまう。それだと信長に内緒で選んだプレゼントの事がバレてしまう!