第25章 貴方と温まる夜〜大晦日特別編〜
「信長でも、焦る事があるの?」
恥ずかしくて、ワザと茶化すと、
「あんな事は二度とごめんだ。もう、二度と俺から逃げるな」
真剣な言葉と目が私を射抜いた。
「...........っ、そんな事言って、知らないよ?」
「何がだ?」
「私、信長が思ってるよりずっと、信長の事が好きなんだよ?」
「それが何だと言うんだ?」
顎を持っていた手は、スリスリと私の頬を撫でる。
「そんな事言ったら、嬉しくて、もっと調子に乗るよ?」
今年は、もうちょっと大人になると誓ったばかりだけど、ヤキモチなんかいっぱい妬いちゃうよ?
「ふっ、貴様はだから阿呆なんだ」
頬を撫でる手が止まり、私の髪を梳くように頭の後ろに差し込まれた。
「俺が貴様を思う気持ちはそれ以上だ」
「っ、......」
観覧車は、ちょうど真上に差し掛かる所。
「セナ、愛してる」
信長の最高の言葉を合図に、私達はお互いの想いを伝え合う様に、甘くて深いキスをした。
「...........はぁ、また、写真、撮られちゃうね」
「新年最初の一枚に相応しいだろう?奴らも仕事だ。撮らせてやれ」
「んっ!」
外の喧騒はどんどん薄れて、信長のキスに溶かされて行く。
新年号にはきっとこのキス写真が載るだろうけど、それ以上に大切な気持ちをもらえた私にはもうどうでも良くて、この甘くて優しいキスを観覧車の扉が開く直前まで受け止めた。