第3章 専属契約
「きゃあ〜!何なのアンタその顔は!?」
朝、宣材写真撮影の時間になり、ケイティが部屋まで呼びに来てくれ、ドアを開けて私の顔を見るなり悲鳴を上げた。
「っ、ごめんなさい。中々寝つけなくて.......」
はっきり言って、一睡もできなかった。
「寝つけなくてってアンタ...、あぁこんなにクマ作って、肌も乾燥しちゃってるし目も少し赤いじゃない!どうすんの、これから撮影があるのよ!」
「...............ごめんなさい」
「セナ、これは遊びじゃなくて仕事なのよ!自己管理位ちゃんとしてちょうだい!」
腰に手を当てながら、ケイティが声を荒げる。
本当にその通りで返す言葉もない。
「..........すみませんでした。以後気をつけます」
頭を深く下げると、寝不足だからか、頭がズキっと痛んだ。
「.........もしかして、社長と何かあった?」
「えっ?」
何でそんな事が分かるの?
「これ、アンタの部屋のドアノブに掛かってたわよ」
「あ、...........」
それは、昨日社長室に忘れていった、高級ブランド店の紙袋。
「中身は、昨日アンタが着てた服に変わってるわ」
「はい」と、差し出された紙袋を戸惑いながらも受け取った。
「で、何なの?社長に抱かれでもしたの?」
ドサッ!
「やっ、違いますっ!そんな事はされてません!」
あまりにぶっ飛んだ質問に、紙袋が手から滑り落ちた。
契約した日を加えても、ケイティとはまだ3日ほどの仲で、そんな質問が飛んでくるとは思いもしなかった。
「お洋服が似合うかどうか見てくれるって言って、見てくれただけです。ただ私が着替えを持ち帰るのを忘れてしまったから、社長が届けてくれたんだと思います」
その後キスされた事は、絶対に言ってはダメだ。
そんな事がバレたら、きっとここに置いてもらえない。
「.........そう、アンタがそう言うならそれで良いわ。とにかくすぐ目を冷やして、メイク担当変えられるか聞いてくるから」
ケイティはスマホを片手にいそいそと玄関から出ていった。