第23章 夏休み
「ちょ、ダメ」
「聞こえん」
ちゅっ!
「やっ、ダメだって」
「煽る貴様が悪い」
ちゅっ、ちゅっ、
「や、んっ、..........ん」
ちゅ、ちゅる、ちゅ、
確か、前にも同じことがあったような...........
これはまさしく.......いつものパターン?
「セナ」
「や、無理無理っ、隣の部屋には行かないよ?」
急なエッチのお誘いが来ない様に、信長の口を慌てて手で塞いだ。
「..........ふっ、貴様も中々分かって来たな」
信長はちょっと残念そうな顔をしながらも、楽しそうに私の手を掴んで離した。
「もう!この間のMVが届いたって言うから来たのに」
応接室で抱かれ気を失って以来、社長室へ行くのは危険と踏んで来ない様にしていたけど、この間撮影したMVの仮編集動画が送られて来たから見に来いと信長が連絡をくれ、久しぶりに社長室へとやって来たのだ。
「だから、見せてやるからここに座れ」
さっきと同様に、自分の膝の上に座れと言ってくる信長。
「却下!危険すぎる!絶対何かするもん!」
実際、さっきも直ぐキスして来たし.........
「貴様が俺を煽らなければ何もしない」
「だ、だからそれが問題なの!」
どこで煽ったのかも分からないのに急に言われて悪戯されても.....
「煽った詐欺も禁止!それならそこに座って見る」
「分かった。早く座れ」
嬉しそうに口角を上げて笑うその笑顔を信用してはいないけど、好きな気持ちに負けた私は信長の膝の上に座って一緒に見る事にした。
あのMVの撮影の後、大学の近くのカフェで佐助君と待ち合わせして後日談を聞かせてもらった。
打ち上げ会場に急に信長が来て私と消えた後大変だった事は既にケイティから聞いていたけど、ホテルから謙信さんの実家に行った後は、私と信長の事をなぜ黙っていたのかとかなり責められ、根性を叩き直してやると言って、メンバー全員で強化合宿をし、カフェで会う前日に都内に戻って来たらしい。
............そんな色々な事を乗り越え形となったこのMV。仮編集だと言っていたけど、さすがEtigo。既に泣ける仕上がりになっていて、目頭が熱くなった。