第20章 格差
織田プロ内にあるカフェは、ここ最近とても繁盛している。
それは.....
「セナ来たよ」
私の隣に立つ玲衣が腕をつついて教えてくれる。
「あ、うん」
カフェ店員のユニフォームを着た私は、カウンター越しに立った信長にお決まりの言葉を述べる。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」
「いつものでいい」
いつものって、何?とはもちろん突っ込まない。
「はい。ホットコーヒーをブラックですね」
信長は何も言わずにスマホをかざし、会計を済ませる。
「ありがとうございます。このままお渡し致しますので少々お待ち下さい」
くるりと後ろを向いて、ホットコーヒーを入れてカウンターへと戻る。
「お待たせしました」
コーヒーを置いて手渡そうとすると、
スッと、私の手の上に信長は手を重ねた。
「ふっ、今夜は俺の部屋で待ってろ。飯は一緒には食えん」
耳元で囁き、ちゅっとその耳の後ろ近くにキスを落とすと、コーヒーを手に行ってしまった。
「っ、........あり....がとうございました」
あまりの早技に赤くなって固まっていると......
「まったく、油断も隙もないわね.....」
お次はケイティ。
信長と私の今のやりとりを腰に手を当て呆れ顔で見ている。
「あ、ケイティお疲れ様です。ご注文はお決まりですか?」
「私もコーヒーホットで」
ケイティは社員証をかざしてお会計を済ませる。
「お待たせしました」
信長の時と同様にコーヒーを入れ、ケイティの前に置く。
「余り社長を甘やかさない方がいいわよ。まぁ頑張ってね」
コーヒーを手に、ケイティも社長の方へ。
そして......
「セナ、さっきのは完全にアウトだ!コンプライアンス委員会にかけられてもおかしくない。お前が強い気持ちで社長の行動を止めないとダメだぞ」
社長秘書の秀吉さんが、怖い顔でレジの前へ.....
「は、はい。頑張ります。あの....ご注文はお決まりですか?」
「俺もホットコーヒーでいい。あっ、何もいらない。でも、バイト頑張ってるんだな。偉いぞ」
そう言って笑顔に変わると、ぽんぽんと頭を撫でてくれた。