第15章 キス禁止
そうだ、そうだよ。彼は常にゴシップ誌を賑わす人で、私は長年、その記事を目にしてきたはずだ。
その彼の相手が自分になったなんて、こんな嬉しいことはないはず。
先ずは、心を落ち着かせようとすぅーっと、息を吸って吐いた時、
「二人の親密さを窺える動画が視聴者からの投稿で届きましたのでご覧下さい」
またもや、私の心を騒がすコメントが聞こえてきた。
............え?
画面には、【撮影:視聴者】と出ていて、昨日カフェのテラス席でキスをする私達が映し出されている。
「うそ..........」
一夜にして、全国にリアルキスシーンを公開されてしまった。
「よく撮れてるな」
信長は騒がれることに慣れているのか、感心した様に呟き、私の頭にキスを落とす。
「や、やっぱりキス禁止」
ぐいっと信長の頭を押して、信長の口元に手を当てた。
「却下だと何度言えばわかる?貴様に禁止される筋合いはない」
彼も負けじと私の手を押し返す。
「テレビでこんなシーン公開されるなんて聞いてない!」
つい最近まで普通の高校生だったのに、無理だよ。
「俺と付き合うからには逃れられん、慣れろ。貴様も一般人ではないからな」
そんな、..........慣れることなんてできるの?
「ネットの方には観覧車の写真も出てる。よく撮れてた」
信長はそう言ってスマホの画像を私に見せた。
「っ......!!!」
がっつりキスしてるっ!!!!!
あ、ダメ......倒れそう.......
目眩でフラフラしていると、
「セナ.......」
甘い声で私の名を呼びながら、信長は私の腰に手を回した。
「俺をここまで本気にさせたんだ、今更逃げられると思うな?」
耳元で囁やかれれば、ぞくりと身体は反応する。
「っ、......でも、もう外でのキスは禁止です」
これから、彼とキスする度、写真が出回るのかと思うと目眩がして気絶しそうだ。
「ふっ、約束はできんが考えておいてやる」
不敵な笑いを浮かべ、涙目の私の腰を引き寄せると、
「愛してる」
「んっ....」
彼はやっぱり、長くて深いキスをした。