第15章 キス禁止
「.............ん..」
目覚めると、彼の腕の中。
周りを見ると、何ともゴージャスな内装に、ホテルに泊まった事を思い出す。
(今、何時なんだろう......?)
時間を確認したくても、彼にがっちり抱きしめられていて、身体を動かすと起こしてしまいそうで、時間を確認する事は諦めた。だけど、窓の外はぼんやりと明るくなって来ていて、もうすぐで朝だと教えてくれている。
チラッと上を見ると、彼の寝顔と規則正しい寝息が聞こえて来る。
初めて、彼より先に目が覚めて寝顔を見る事ができた。
胸はずっときゅんきゅんしっぱなしで、くすぐったい。
上半身は何も着ずに寝ている彼の胸に頬を寄せると、昨夜の事が鮮明に思い出された。
まだ、抱かれることへの抵抗は消えてないけど、初めて、抱かれる事が幸せだと感じることができた。
お腹に手を当てれば、彼の熱がまだ残っている気がして、益々胸がきゅんとした。
「起きたのか...」
頭の上から彼の声が聞こえてきた。
「あ、しゃちょ...じゃなくて...のぶ...なが?...おはようございます」
意を決して、社長を名前で呼んでみた。
「ふっ、やっと呼んだか」
私を抱きしめる腕に力がこもり、ちゅっと頭にキスが落とされた。
「まだ早い。もう少し眠れ.........」
私のおでこに唇を押し当てたまま、彼はまた眠りについた。
(疲れてるんだな....)
いつも仕事で忙しそうだし、ここ最近は、ずっと夜は私と過ごして、朝も知らないうちに居なくなってて.....あれだって、よく考えたら彼なりに私との時間を作ってくれてたのかもしれない。
ただ、誰でもいいから抱きたかったのだとしても、他の誰でもなく私の元に来てくれていた事が、今なら前向きな気持ちで受け止められる。
(信長の事が好き、........大好き。私を、迎えに来てくれてありがとう)
気づかれない様に、彼の胸に唇をそっと置いて、私も目を閉じた。