第2章 XOXO
「わぁ〜何度見てもすごい建物」
ここは、東京都心の一等地。しかも駅から徒歩3分。
そんな所にそびえ立つ25階建てのビルが、織田信長が経営する織田プロダクションの自社ビルで、私が今日からお世話になる所。
高校3年生の夏、インターハイの陸上女子100mに出場するため会場である九州に来ていた私は、道路に飛び出た犬を助けようとして交通事故遭い左足首を骨折し、中学の時からの夢であったインターハイを欠場した。
この時私は人生で初めてネットニュースの人となった。
運び込まれた病院で出会ったのが、幼い頃から憧れていた元アスリートで、俳優でモデルで現在は大手芸能プロダクション、織田プロの社長、織田信長。
彼は私を彼のプロダクションにスカウトしにきたのだと言い、人気ファッション誌〈Bella bambina 通称:Bb〉のモデルオーディションを受ける様に勧めてきた。
私がモデル?
と疑いながらも、憧れの織田信長にまた会いたくて、私はその半年後、勧められるがままオーディションを受け、何と合格。
その後、大学も何とか東京の志望校に合格し、大学受験も無事終わった。
そして三月。
高校を卒業した私は、実家の神奈川を出て、今日からこの自社ビルの中にある寮にお世話になることになった。
神奈川県なら通えるのではと思われるかもしれないけど、私は神奈川と言っても都心からは遠く離れた神奈川県で、在来線を乗り継ぎ1時間30はかかるほどの遠さで、大学も都内な為、元々一人暮らしをする予定だった。
ゴシップ記事の記者たちから所属タレントを守る為、織田プロは自社ビル内に住居スペースもあり、織田プロに所属するタレントは、誰でも望めばその収入に応じた価格で寮に入る事が出来る。
本当に、東京の都心の人気エリアに寮と言っても一部屋づつ孤立しているいわば賃貸マンションに格安で住めるなんて夢の様な話だ。
「今日からお世話になります」
ビルに向かって一礼をし、エントランスを潜った。
2年ほど前に完成したばかりのこの社屋は全てが新しくて綺麗。
私がここに来たのは今日で二度目。
一度目は、モデルのオーディションに合格し、正式に織田プロと契約書を交わした時だった。