第12章 本当の気持ち
あのスクープ写真を見た時、俺の贈った服を着て、他の男と手を繋いで街を歩く奴の姿に、怒りが沸いた。
デートをしたいと言った奴を跳ね除けたのは俺自身だ。そんな事は敬太郎に言えとも言った。自分が招いた結果だったが、その写真に写るのは俺ではないと言う事に、俺には見せたことのない笑顔のセナに、いくつもの奴の初めてを奪われた気がして、無性に腹が立った。
結果、怒りをぶつけるようにセナを抱いてしまった。
初めての時位は優しく抱いてやるつもりだったのに、止められなかった。
セナの真っ新な身体に初めて痕を落とした瞬間を忘れない。
どんな時も綺麗なセナ
やっと手に入れたセナは想像以上に俺を興奮させた。
毎晩震えながら俺を受け止めるセナに構わず、歯止めが効かないほどに溺れて行った。
可愛いと思う一方で、綺麗なセナを俺の闇に引き摺り込んで汚してやりたい衝動にも駆られた。だから、ピルを飲ませて奴の中に俺の欲をぶちまけた。
でも、そんな事は無理だった。
どんなにこの手に抱いても、セナは俺の闇には堕ちて来ない。
どんなにひどい抱き方をしてもセナの口から漏れるのは、俺を好きだと言う言葉だけ。
そして、その言葉に苛立ちながらも俺は勝手に安心していた。
セナは決して俺から離れていかないと....
毎晩、腕の中で眠るセナを見れば、温かいものに触れた様な心地が身体中に広がっていたのに.......
人の情はとっくに捨てたはずの俺に宿った初めてのこの感情........
あんなにも、セナは俺に伝えてくれていたのに.......
助手席に投げ捨てたスマホを手に取り敬太郎にかけた。
「.......敬太郎、聞きたい事がある」
あの日、セナが俺に言いかけた言葉....
「.....分かった。あぁ、そこへ向かう」
僅かしか交わしたことのない会話の中で、セナが俺と行きたいと言った場所が一つだけある。
間違いなくセナはそこにいる
「逃げるのはやめだ、待ってろセナ」
もう誤魔化さない、貴様を二度と手放さない!
はやる気持ちを抑え、俺はアクセルを強く踏んだ。