第11章 かざぐるまの恋 【完】
(主人公Side)
善逸に手紙を書いて
どのくらいたっただろう。
もう何を書いたのかさえ忘れてしまった。
時々、チュン太郎が
藤の花をくわえてやってきたけど
手紙はなかった。
善逸の手紙には
炭治郎くんがまだ目覚めないこと
一人任務が辛いこと
柱という人たちのこと
鬼殺隊についていろいろなことが書いてあった。
外の世界を何も知らない私にとって
善逸の手紙は興味深くて面白いものだった。
手紙の最後には
『読んだら燃やして』と書いてあって、
もちろん誰にも見せるつもりなんてない。
でも、鬼殺隊は政府公認のお仕事じゃないから
情報が漏れたら大変なことになる。
私は素直に、手紙を燃やしていた。
内容を一言一句覚えておくのは
無理な話で、
だんだんと忘れてしまった。
「…はぁ。善逸、会いたいな」
空の遠くの方をぼんやり見ていると
見覚えのあるスズメがこちらに向かってくる。
「チュン太郎!!」
チュン太郎の口には
藤の花と手紙がくわえられていた。
「今日は手紙もあるのね!嬉しい!」
そっと私の両手に置く。
「…チュン」
チュン太郎はうつむいたまま動かない。
「チュン〜〜〜〜!!!!」
小さな瞳からポロポロと涙がこぼれ、
一粒、二粒と手紙に吸い込まれていった。
声をかける暇もなく
チュン太郎は窓から飛びたった。