第10章 俺はどうしたい?
俺は自分が信じたいと思う人を
いつも信じた。
それは別に悪いことじゃないし、
炭治郎だって俺の強さだって言ってくれた。
でも、
騙された、裏切られたと知った時
「俺は信じていたのに。お前のせいだ」
と、心のどこかで
人のせいにしていたんだ。
だから、梅月ちゃんへのこの気持ちを
認めたくなかったのかもしれない。
自分を信じる…か。
考えたこともなかったな。
「…ありがとう、炭治郎。
俺、もう一度自分の音をしっかり聞いてみる。
そして梅月ちゃんに “最後の” 手紙を書くよ」
「そうだな、それが良いと思う!」
俺が炭治郎の背中を叩いたことは
おとがめなしだった。
匂いでバレてたかな。
俺が泣きそうだったってこと。
まぁいいや。
今更隠し事なんてする必要ないんだから。
部屋に戻り、机に向かう。
筆を取るが、これが最後だと思うと
なんて書いたらいいか分からなくなった。
行灯のあかりがゆらゆら揺れる。
優しい月明かりが顔を照らす。
「梅月ちゃんを傷つける奴は
俺が許さない」
「俺、絶対君を守るよ」
あの時言った言葉は嘘じゃない。
君の顔を見ていたら自然に出てきた言葉なんだ。
ーーでも、今の俺にはやらなきゃならないことがある
深く、深く、深呼吸をしてから
俺は紙に筆を走らせていった。