第10章 俺はどうしたい?
「…どうしたんだ善逸。
何かあったのか?」
梅月ちゃんと過ごしたのは
たった数日だったけど、
「可愛い女の子」という感情だけではなかった。
俺と、音が似ていたんだ。
梅月ちゃんの手紙で知ったけど
親に捨てられて、誰にも期待されることもない
“ささやかな幸せ”すら誰も望んではくれない。
似ているから、気になったのかな。
炭治郎が禰豆子ちゃんや鬼狩りの話をしたとき
梅月ちゃんからは今までに聞いたことのない
音が聞こえてきた。
小さく華奢な梅月ちゃんからは考えられないほど
けたたましい音だった。
行かないで、そばにいて
もう危ない目に遭って欲しくない…
それは“俺たち”じゃなくて
“俺だけ”に向けられた音だった。
嬉しかった。本当に。
誰かに必要とされていることが。
梅月ちゃんと離れれば
次第に忘れていくと思ってた。
でもそれはとんでもない間違いで
ふとした時に思い出すのは
梅月ちゃんの笑顔…
俺は、この感情の名前を知ってる。
それでもかたくなに認めたくなかった。