第9章 嵐の後
「はっ…はっ…」
出血のしすぎだ。
まぶたを閉じていても
目玉がぐるぐる回っているのがわかる。
息が、うまく出来ない。
「—さん!梅月さん!いますか!?」
「ぜん…いつ?」
目を開けても焦点が定まらない。
「すみません、俺は善逸じゃありません。
竈門炭治郎と言います。
善逸にあなたがここにいると聞いて
迎えにきました」
この声…聞いたことがある
「…君!?先刻は本当にすまなかった!
禰豆子…俺の妹が飛びかかってしまって…」
「……」
もう、頷くだけで精一杯だった。
再びまぶたが自然と下がってくる。
妹…?何?どういうこと…?
「禰豆子、この人も運べるか?
辛いだろうが、辛抱してくれ」
「ムー!」
元気の良い返事が聞こえると
ふわっと身体が浮いた。
暖かい羽に包まれているような
不思議な感覚だった。
炭治郎くんが来てくれたということは
善逸は動けないほど怪我をしているんだ。
私のせい…私のせいで…
「梅月さん、どうか自分のことを責めないで欲しい
嫌いにならないで欲しい。
善逸は、そんなこと望んでいません」
鬼殺隊の剣士様は
人の心を読むこともできるのだろうか。
炭治郎くんの優しい声が耳に残った。