第8章 稀血
着物をちぎって腕を縛った。
一瞬で赤く染まる着物。
それでも足りずに腕を伝う生ぬるい血。
フラフラする、足がもつれる。
走れ!走れ!
もっと、もっと遠くへ!
「…っ!?」
自分の引きの強さを、心底恨んだ。
まぁるい月が私の目の前に映し出したのは、
善逸と蕨姫が対峙した姿だった。
「俺は君に言いたいことがある。
耳を引っ張って怪我をさせた子に謝れ。
女の子は君の食糧じゃない。
梅月ちゃんの血を飲んでいただろう」
「だったらなんだって言うのよ!
誰に口きいてんだこの不細工!!」
息をすることですら、はばかられた。
なんでこんな時に限って…!
腕を伝う血が、地面に滴り落ちる。
「…ん?アハハ!!
梅月、アンタの血の匂いがするよ!!
アタシに喰われにきたのかい?
望み通り喰ってやるよ!!!」
今まで善逸を襲っていた帯は
急に角度を変えて加速する。
あたりの楼をなぎ払い、
もう、目の前だ。
「…藤の花の匂い!?このっ…!」
帯が一瞬ひるんだようにみえた。
「梅月ちゃんに
手を出すなぁぁあぁ!!!!!」