第8章 稀血
「ガァァ!!ヴゥゥ!!」
口からはだらしなくよだれをボトボトと垂らし
見開いた目は、
確実に私を喰い殺そうとするものだった。
「だめだ!!辛抱するんだ!禰豆子!!」
目の前にある死の恐怖に怯え、
その場でただ震えることしかできなかった。
ガチガチと、鬼が刀を噛む音だけが響く。
「グアァアァァ!!」
再び雄叫びをあげると、
鬼と男の子は天井を突き破って
上の階に飛んで行った。
た…助かった?
いや、私だけ助かっても意味がない。
上の階にはまだ女の子たちがいるのに…!
まだあの鬼の声が聞こえる。
ドン!と一際大きな音が聞こえると、
男の子と鬼が上から落ちてきた。
真っ赤な瞳に、私が映る。
「君!!君は稀血だろう!早く逃げるんだ!!」
その声で、やっと足が動いた。
…私がここにいてはだめだ。
鬼に狙われる確率が圧倒的に高い。
ここにいたら、皆を巻き込んでしまう。
どこか、一人で隠れられるところ…