第6章 蛇とカエル
それに、
「鬼」という言葉を言った途端、
変わった善子の目つきがひどく気になった。
あともう少し、あともう少しで
全てが繋がる気がする。
何か足りない。何かが…
ーーカタン
襖を開ける音がした。
「ぜ…ん、こ…?」
瞳だけを音のする方へ向けると
サラサラと美しい白銀の髪をなびかせた女が立っている。
「梅月、最期に良いことを教えてやろう」
その声は…
「わ、蕨姫お…」
目に見えない速さで私の顎を掴んだ。
「誰が喋って良いと言ったのよ!!」
ミシッミシッっと骨が砕けそうな音がする。
か細い指からは考えられないほどの力だ。
身体中の細胞が「逃げろ!」と叫んでいるが
動くはずもない。
蛇に睨まれたカエルとはこのことだ。
冷や汗が止まらない
心臓の音がドクドクとうるさい
睨み合った蕨姫花魁の瞳には
“上弦 陸”
と刻まれていた。