第6章 蛇とカエル
どのくらい横になっていただろう。
相変わらず身体は動かないが、
意識だけはハッキリとしてきた。
新しい情報が欲しくて
まぶたをそっと開けると、
不気味な灰色をした雲が
空を覆っている。
(…なんだか、嫌な予感がする)
考えごとをするには
十分すぎる時間があった。
昨日、蕨姫花魁に言われた言葉が
反芻する。
「今まで生かしてやったこと、感謝しなさいよ」
なんだろう?この違和感。
私、本当はもっと前に死ぬはずだったの?
どうして?何故?
「アンタは美人で稀血」
まれちはおそらく稀血のことだろう。
医者の客に聞いたことがある。
病気や怪我をして輸血が必要な場合、
稀血だと血液の用意が十分にできない
珍しい血なんだ…と。
自分が稀血なんて、蕨姫花魁に言われるまで
知らなかった。
何故私が稀血だと知っていたの?
それに、
「そろそろ良い頃…」
ってどう言うこと?
やっぱり私はもうすぐ死ぬのか。
死ぬって言っても病気もしていないし、
ここにいれば命に関わるような大きな怪我だって…
そこまで考えたとき、
私の思考が一つの可能性で止まった。