第5章 闇への一歩
ーードガァッッ!!
近いところで
身体中がビリビリするような
物凄い音が聞こえた。
女たちの悲鳴と大きな足音も聞こえる。
「蕨姫花魁!!
この通りだ、頼む!!勘弁してやってくれ!!」
旦那さんの叫びにも似た声が
女郎屋にこだまする。
「もうすぐ店の時間だ。客が来る…!!
俺がきつく叱っておくから、どうか今は…!!」
蕨姫花魁がまた何かしたのだろうか。
様子が気になるが、
指一本動かすことができない。
しばらくすると、騒ぎが収まったのか
辺りが静かになった。
「善子を近くの部屋へ運べ!」
善子?何?何があったの!?
「ぜ…ん…」
かすれるような声を出しても、
届くはずもない。
今すぐ部屋を飛び出したい気持ちとは裏腹に
全く言うことを聞かない身体に
怒りすら覚えた。