第5章 闇への一歩
「梅月花魁…!」
名前を呼ばれて顔を上げると
涙を浮かべた朝露と小春が
私の身体を支えた。
「はぁっ…ごめ…ん…」
目を開けていられない。
天井と床がぐるぐる回って見える。
二人に引きずられるようにして
自分の部屋へ向かう。
廊下の奥でバタバタと足音が聞こえた。
「梅月ちゃん!!
くそっ!遅かった…!」
誰…?男の子の、声?
でも、どこかで聞いたことがある。
もうまぶたを上げる気力すら残ってない。
ふわっと体が浮かぶと
柔らかい布団の上に下ろされた。
あれ…?この感じ…
「…絶対に、許さねぇ」
微かに聞こえた言葉が
昨日善子に言われた言葉と重なった。