第5章 闇への一歩
「今まで生かしてやったこと、
感謝しなさいよ」
蕨姫花魁と目があった瞬間、
首に何かが刺さるような痛みが走った。
まただ…今日も…
「痛っ…」
サーッと全身から血の気が引いていくのが分かる。
蕨姫花魁の顔が幾重にも重なって見えた。
ただうずくまっているだけなのに
呼吸が荒くなる。
「はっ…はっ…」
「あはは!アンタは美人で “稀血” !
最高だよ!そろそろ良い頃だ」
…まれち?
なんのこと…?
何も、考えられない。
自然と私は暗い沼へ意識を手放した。
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「いつまでアタシの部屋で寝てんだい!」
ーーガンッ!!
腹部に激痛を感じて目が覚める
「げほっ…はぁっ…」
「早く部屋に戻りな!」
必死に畳のへりを掴んで
身体を前に引きずっていく
「この愚図!!」
腰の辺りを蹴られ、
転がるように廊下へでた。