第5章 闇への一歩
(主人公side)
「今日はあまり善子と話せなかったな…」
怒ったり、泣いたり、
笑ったかと思ったら真面目になったり
コロコロと表情が変わる善子が
面白くておかしくて
ずっと、一緒にいられたら…
そんなことを考えているうちに
自分の部屋についた。
梅月ちゃん!おかえり!!
待ってたよぉぉ〜
しかし襖を開けても、
私が期待していた言葉は聞こえてこなかった。
「あれ?いない…ご飯を食べてるのかな」
シン…とした部屋は
善子が来る前の部屋と何も変わらないのに、
何故か今はやけに冷たく、静かに感じた。
「蕨姫花魁のところに行かなきゃ…」
気が重い。
蕨姫花魁のところへ行くと
いつも具合が悪くなる。
全身から血が抜かれるような、
息をするだけで精一杯な状態になって
次の日は全く動けなくなる。
「蕨姫花魁、梅月にございます」
「遅い!早くしな!」
鼓膜がビリビリと震える。
その迫力に気圧され、
顔を上げることができない。
「ふん、アンタはやっぱり美人だね。
アタシの次に」
細長い指で
私の顎をグイッと持ち上げた。