第1章 私は、花魁
「白鳥様、梅月にございます」
「待ちくたびれたぞ。早う入れ」
襖を開けると同時に
男は私の腕を強く引いた。
「きゃっ…!」
体制を崩し、男に引きずられるように
部屋へ入る。
遊郭に来るような男はたかが知れている。
女を人間だとは思っていない。
自分の欲望を満たすためだけに
ここへやってくるのだから。
「さぁ、梅月!いつものように鳴いておくれ!」
ーーーバチン!
「いっ…!白鳥様!おやめください!」
乾いた音と、私の叫び声が部屋に響く。
「良いのぉ…美しい顔が苦痛に歪んでおる…
最高じゃ!!ハハハ!」
男は帯を解くことも、着物を脱がすこともなく
無理矢理私の足を開いた。
何度名を呼んでも、男の身体を押し退けようとしても、
その行為は逆に男を喜ばせてしまっているようだった。
「わしに逆らうのか!梅月!」
ーーーバチン!
「…っ!」
一瞬で口の中に血の味を感じた。
頬を噛んでしまったのか。
こんなに大声を出しているのに
誰一人助けにはこない。
早く終われ!早く終われ!
そう願うのが精一杯だった。