第3章 おとぎばなし
「梅月ちゃん…もし嫌だったら
無理しなくても良いんだけど、
倒れてきたときに、その…
少し足が見えちゃって。
アザ、どうしたの?
もしかして、さっきのことと何か関係ある?」
ついさっきまで
泣きじゃくっていた善子とは
違う雰囲気に圧倒されながらも、
その瞳は優しく私を見つめた。
「…実は、、」
何故か、善子にはすべてを話せた。
時折涙をこぼしながら、
昨夜あったことを
ポツリ、ポツリと吐き出した。
善子は私を抱きしめながら、
うん、うん、と静かに聞いてくれた。
なんだろう、この安心感は。
すべてを話し終えると
善子はおもむろに私の頬を両手で包んだ。
親指でそっと、私の涙を拭う。
「…?」
「梅月ちゃん、女の子は商品なんかじゃない。
殴られた頬も、腕も、足も、
痛いって言ってるよね?
梅月ちゃんの心も
苦しいって言ってるよね?
それを梅月ちゃんが無視しちゃいけない。
梅月ちゃんも、一人の人間だ。
自分の欲望を満たすためだけに
梅月ちゃんを傷つける奴は
俺が、絶対に許さない」
提灯の灯りがゆらゆらと揺れる。
その度に、善子の綺麗な黄色い髪がキラキラ光った。
真っ直ぐ私を見つめる瞳は
優しくも力強くて、
吸い込まれそうだった。