第2章 あなたと私
気がつくと三味線の音はやんでいて、
人の話し声が
かすかに聞こえるだけだった。
「梅月ちゃぁぁぁん!!!!
ごめんよぉ!!」
泣き叫びながら
善子が部屋に戻ってくる。
大粒の涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしたまま
抱きついてきた。
「きゃっ…ど、どうしたの??」
「急に一人にしてごめんよぉ!!
寂しかったよね?心細かったよね?
こんな可愛い子を置いてくるなんて
お…アタイどうかしてた!!」
お気に入りの着物が
善子の涙で湿ってくる。
「大丈夫だよ、善子の三味線が聞こえてきたから
ずっと聴いていたの」
「えっ…ずっと?アタイのことを…!?
それって、好きってこと!?
そうだよね!梅月ちゃん!!」
鬼気迫る善子が
ずいっと顔を近づけてくる。
善子の言う「好き」と
私が思う「好き」が
何か違う気がするのは
気のせいだろうか…。