【ハイキュー】キッカケはいつも君だった。【影山飛雄】
第1章 君との大切な絆
「え?」
飛雄の祖父である一与の驚愕の一言に、空の手で握られていた袋が嫌な音を立てて落ちた。
今朝、シューズ袋を背負って家を出ようとした所、母親から出納とタオルの入った袋を渡されていたのだ。
出納は無事だろうかなんて考えている余裕は、今の空にはなかった。
一方、同じ話を聞かされた飛雄も、この世の終わりのような顔で動かなくなってしまっていた。
一与は慌てて空の手から落ちた袋を拾う為屈んだ。
袋の中に入っている出納を取り出し、目視で割れていないか、傷はないか等、隅々まで出納を確認し始めた。
一通り確認し終えると、ホッと息を吐き、出納を袋に戻すと、飛雄と空に目線を合わせた。
「もしかして……、いや、2人ともこの前見学行ったよね!?自分達のチーム教えたよね!?」
飛雄も空も一与の言葉に全く身に覚えがなく、2人して顔を見合わせた。
「飛雄……、そんな事一与さん言ってたっけ……?」
「……、ワカラナイ……」
小学2年生になった飛雄と空は、今日から近所のバレーボールチームに入り、同じチームで一緒にバレーをする、…………はずであった。
確かに、見学は行った。
チームの練習や、試合の様子だって見たはずだ。
しかしそれは練習や、試合の様子だけであって、人の顔、況してや性別なんて一切見ていない。
見学の日は飛雄と空も、これから自分達が所属するチームの見学だけに興奮しており、一与の言葉もあまり頭に入っていなかったのだ。
だからこそ、まさか男女別のチームがあるだなんて一切疑いもせず、飛雄と空は、今日から同じチームで本格的にバレーを始められる事に、胸の高鳴りを抑えられずにいた。