第1章 ミクスド始動
いつも自分を隠して
違うものとすり替えて
そんな相手を信じきれるの
見えない真実を探したら
隠された素顔を追い求めたら
いつか 心の内側に寄り添えるの
授業を終えた萌は、通い慣れたいつもの女子のコートではなく、普段は入ることのない男子のコートへ赴いた。今日からミクスドダブルスの練習が開始されるためだ。
ミクスドの選手に選ばれていた萌は、緊張気味に男子コートの様子を伺った。フェンスの向こうに、何人かがコート脇で準備運動をしているのが見える。
立海大附属中の同じ部だけれど、女子より男子のほうがはるかに強いし…
普段は完全に別々で活動しているため、いざ来てみると気後れして足が踏み出せずにいた。まごまごしているところへ後ろから声が掛けられる。
「入らんの?」
「えっ」
振り返ると、背の高い銀髪の生徒が怪訝そうにこちらを見ていた。仁王先輩だ。
「男子テニス部に用があるんじゃろ?」
萌の横を通り過ぎ、フェンスの入り口を開けたまま彼は先に奥へ進み、部室へと消えてしまった。
ためらっていても仕方がない。意を決して敷地内へと足を踏み入れる。
既に何人かがコートで打ち始めているなか真田の姿を発見し、まずは真っ先に彼に向かって行き事情を話した。
「解った。ミクスドの件は聞いている。これからよろしく頼む」
準備を済ませた後、真田の集合の合図で皆が集まり一同は本日の練習メニューの説明を受けた。
「…それと、今日からミクスドの練習も加えることとする。コートの割り振りが普段と異なるため、よく確認するように」
ミクスド練習が追加される旨が発表され、解散後皆がきびきびと持ち場について練習を始める。
萌は真田から設備や部室の簡単な説明を受けつつ、ダブルスパートナーは仁王となったことを言い渡され、コートに連れて来られた。
「そこで打ってるのが仁王だ。準備運動が終わったら、二人で練習の方針について決めてくれ」