第2章 過去の自分
『…だから、何も言わないで私立の中学受験したの。
そのあとも、会わないようにずっと避けてた…。
ごめんね…』
長い話を、焦凍は静かに頷きながら聞いていた。
申し訳なさでいたたまれなくて、楓風はうつむいた。
「…悪ぃ。気付いてやれなくて、助けてやれなかった。
俺はずっとこの3年間…
お前に何かしちまったんじゃないか、嫌われたんじゃないかって考えてた」
焦凍は、すごく悲しそうで、悔しそうな顔をしていた。
(そうだ、焦凍は昔からずっと…優しかった)
『 ううん。何でもないって嘘付き続けて避けてたのは私だし、焦凍は何も悪くないよっ!!
…ほんとにごめんね、焦凍…。
…でも私、結局強くなんてなれてなかったみたい。怖くて、何も…できなかった。
…悔しいなぁ』
「…そんなことねぇ、だって逃げなかっただろ。
お前は、前よりずっと、強くなってるよ。
それに、これからもっと強くなればいいだろ
高校で…」
3年間の間に出来てしまった距離と誤解がとけて、二人は暖かい、不思議な気持ちになった。
「…そういえばさっき、雄英受験したって…」
『あ、うん。やっぱり憧れの雄英行きたいもんね!!
努力が実ってね、推薦枠で受けて…
無事合格しました!!』
「…俺もだ」
『…エ?』
(俺も、とは…どういう…)
『…雄英受けたの!?推薦で!?』
「あぁ。受かった。」
こんな奇跡があるだろうか。
また一緒に過ごせるようになるなんて…
「…っ、お、おい、大丈夫か…」
あまりの嬉しさに、楓風は涙が溢れてきて、
小学校のときからポーカーフェイスで動じない焦凍がオロオロしているのに笑ってしまった。
『ふふっ、また一緒に学校行けるんだぁ』
久しぶりに、作り笑いじゃない、自然な笑顔が溢れた。
二人で笑いあって、懐かしい気持ちになった。
「楓風は、作り笑いなんかするな
…笑ってる顔が、一番好きだ」
『…ありがと』
(今日あいつらに会わなかったら焦凍にも会えなかった。
最悪な日だと思ったけど、やっぱり今日は最高の日になったなぁ
次もしまたあいつらに会ったとしても、なぜか大丈夫だっていう自信がある。
…焦凍のおかげ、かな)
楓風は今までにないくらい晴れやかな顔をしていた。