第9章 君のヒーロー
*楓風side*
一体、何があったのだろう。
ステージに入場した焦凍は、明らかに冷たく、悲しい雰囲気に戻ってしまっていた。
一瞬で全体を覆ってしまうほどの大氷壁。
焦凍の怒りが、それに現れているように見えた。
(…大丈夫、かな…。)
焦凍のことが気掛かりでならないが、次は自分の出番である。
私は焦凍ことで頭がいっぱいになりながら、ステージへ向かった。
* * *
楓風の一回戦の相手は上鳴。
女の子相手にしかも楓風ちゃん相手に~…と余計なことをくっちゃべりながら近付いて来て、
いきなり最大出力をかます上鳴。
楓風はそれを容易く交わし、アホになってウェーイと親指をたてる上鳴を
(あ、なんか可愛いぞ…)
と思いながら弱い風で場外まで押し出した。